ヨハン・ゲーテ『ファウスト』 | 文学どうでしょう

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ヨハン・ゲーテ(池内紀訳)『ファウスト』(全2巻、集英社文庫ヘリテージシリーズ)を読みました。

『ファウスト』は有名なので、みなさんも名前ぐらいはご存知だろうと思います。

これは小説ではなくて、戯曲の形式になっています。演劇の台本のような形。登場人物の名前と台詞がメインになっています。

一行の文字数が少ないので、その点は読みやすいですが、言い回しや内容的に難解さがあったりもします。

内容的なことに触れる前に、まず翻訳について確認しておきます。手に入りやすいのは、この文庫の他に、新潮文庫の高橋義孝訳、岩波文庫の相良守峯訳、講談社文芸文庫の柴田翔訳のいずれかだと思います。

あるいは、文語体でよければ、森鴎外の訳も岩波文庫とちくま文庫で読めます。名訳と名高いです。

ぼく自身は新潮文庫の高橋義孝訳と、この池内紀訳でしか読んでないので、全部の比較はできませんが、池内紀訳は相当読みやすくてびっくりしました。

内容はかなり頭に入ってくるので、入門には集英社文庫ヘリテージシリーズはよいと思います。

ただ、読みやすいということは、それだけちょっと注意が必要で、韻文を散文として訳しているとのことなんです。

つまり詩としての形式を捨てて、文章として読みやすくしているわけですね。その分とても読みやすいんですが、ちょっとどうなのかなあと思わないでもないです。

その辺りはみなさん各自で判断して下さい。読みやすさをとるか、文学的な格調高さをとるか。

さてさて、内容ですが、第一部と第二部に大きく分かれています。

第一部は、悪魔のメフィストフェレスが神様とある賭けをするところから始まります。ファウストという男の魂を賭けるんです。

メフィストフェレスはファウストのところにやって来ます。ファウストを満足させて、「時よ、とどまれ、おまえは実に美しい」と言わせれば、メフィストフェレスの勝ちで、魂がメフィストフェレスのものになります。

魔女の力を借りて、ファウストを若返らせて、ファウストは若い娘グレートヒェンと恋に落ちるんですね。

ファウストとグレートヒェンが恋に落ちたことによって、起こる様々な悲劇が第一部で描かれていきます。この第一部までは、誰でも楽しく読むことができます。

第二部はがらっと雰囲気が変わって、こちらはホメロスの『イーリアス』『オデュッセイア』辺りの基礎知識や、ギリシャ神話の知識がある程度必要になってきます。

ギリシャ神話に出てくるヘレナという絶世の美女がいるんですけども、このヘレナを蘇らせて、ファウストとの関係が描かれます。ホムンクルスという人工生命体が出て来たり。

そしてファウストは理想の土地を作ろうと努力します。はたしてファウストの魂の行方はいかに?

というお話です。この第二部はなかなかに壮大で、基礎知識も必要になってくるので大変です。

『ファウスト』の話をざっくりまとめてみます。悪魔と契約する話です。満足させられたら魂をあげるよと約束するわけですね。

というわけで、ファウストに対して、悪魔メフィストフェレスが色々手を貸して、理想とか夢とかを叶えていきます。その過程で、文学的なテーマがどんどん浮き彫りになっていき、壮大なスケールの物語は幕を閉じます。

そんな感じです。興味を持った方は、ぜひ読んでみてください。ストーリーを把握するには、この集英社文庫ヘリテージシリーズの池内紀訳はなかなかよいと思います。

その内、他の訳でも読んでみたいと思います。読んだらまた何かしら書きます。